バンダイ「1/100 ガンタンクR44」キットレビュー

バンダイ「1/100 ガンタンクR44」キットレビュー

2018/03/30

  • 作例・レビュー

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バンダイ「1/100 ガンタンクR44」

 

「機動戦士ガンダムF91」シリーズよりガンタンクR44です。1991年に発売されたいわゆる旧キットですが、四半世紀以上前の製品ながら再販の度に真っ先に売り切れになる傑作です。とはいえガンタンクR44のプラモデルはこの一種類しかないので、すなわちこれが最新モデルということには……ならんか(笑)

 

 

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この時期のバンダイプラモはランナーにアルファベットがなく、単なる通しナンバーが振られています。こちらはパーツNo.1から22までの枠。

F91シリーズのキットは「色プラ」を本格的に取り入れたプラモデルで、シリーズ全体の中で最も低価格なガンタンクR44も丁寧に色分けされています。1991年当時バンダイは新作映画「機動戦士ガンダムF91」をスタート地点に、ガンプラ(あるいはガンダムコンテンツ全体)をリニューアルしようと試みていたようで、結構な力を入れて製品開発を行っていました。おかげで同時期に展開していたOVA「機動戦士ガンダム0083」のプラモデルが割を食って散々な出来だったのは、未だに語り継がれるところです。アニメ作品の人気としてはF91よりも0083の方が圧倒的に高かったのは、皮肉な成り行きではある。

 

 

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No23~NO.42ランナー。ガンダムF91に登場するモビルスーツは、それまでの機体よりも小型な15mサイズで構成されています。それまでのガンダムシリーズのプラモデルが1/144スケールを主体にしていたのに対して、F91では小型のモビルスーツを1/100スケールのプラモデルにしてシリーズ展開を行うというコンセプトでした。何故そうなったかにはいろいろ事情があるのですが、その辺の話は今回の記事には直接関係ないので身の周りの古参ガンダムファンに石を投げて問いただしてください。たぶん人は分かり合えるはずです。

 

 

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No.43~73ランナー。およそ「ガンタンク」と名の付くMSもファーストガンダムのRX-75ガンタンク以来いくつもありますが、このガンタンクR44は戦車から人型に変形するモビルスーツで、ガンタンク一族にしては珍しく「脚」のパーツがあります。「脚なんて飾り」じゃないんですよ?

 

 

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共通のポリキャップで規格化されている現行のガンプラとは違って、関節部分のポリキャップは個別の製品ごとに独自に設計されています。製品としてどちらの設計コンセプトが優れているのかは、シリーズ全体の費用対効果や発展性を考えたらやっぱり現行製品のほうが勝っているのでしょう。けれどもひとつのプラモデルとしてみると、製品ごとに独特な構造を持たせることが出来る90年代の設計コンセプトというのも面白いものです。

 

 

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丁寧に多色成形されているのでシールは少なめ、それと水転写式のデカールが付属します。デカールはプラスアルファという位置づけですが、現行のシリーズよりも作り手の技量をちょっと上に見ている感じですね。

 

 

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流石に古いキットなのでパーツの状態はやや悪く、若干のバリが見られます。しかしながら四半世紀以上前の製品を当時と同じ価格で入手できるのですから、そこは感謝でありますな。消費税は上がりましたが(苦笑)

 

 

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小型機体が主流のF91シリーズの中でもガンタンクR44はさらに小さなモビルスーツ。それでも頭部のクリアーパーツや主砲など細部までしっかりした内容のプラモデルになっています。バンダイはあまりプラモデル設計者の名前を表に出さないのですが、このキットは誰が設計したんだろう?ちょっと気になるのですよー。

 

 

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ポリキャップにも他のガンプラでは見ないような形状のパーツが並んでいて新鮮な感動。27年前からあるんだから単に自分が知らなかっただけではありますが(笑)

 

 

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組立説明書は1枚のリーフレットですが、開田裕治画伯による素晴らしいボックスアートが説明書にも載っています。戦争博物館の展示品が謎の侵略者に対して立ち向かうという本編でのガンタンクR44設定を活かした精悍なイラストで、「立ち上がる」ポーズが同時に「変形」する様子を捉えている凝った構図。背景には展示品と思しきMSが描かれてニヤリとするところなのですが(同じく開田裕治画伯がボックスアートを手掛けたガンダム0080のMSですね)

 

問題は「機動戦士ガンダムF91」にこんなシーンは1秒たりとも存在しなかったことで(´・ω・`)

 

映画本編中に於ける活躍の度合いはともかく、どんどん作って行きますよー(・∀・)ノ

 

 

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組立てはまず腕から始まります。ガンプラ全体を見てもここから始めるキットは少ないように思いますが、特にF91シリーズの中ではこのガンタンクR44だけが腕の組み立てをスタート地点にしています(ちなみにF91シリーズその他のキットは全部脚から始める)。もしかするとこのキットだけ設計担当者が違うんじゃないかな?明確な根拠がある訳でもないんですが、そんな印象を受けます。肘関節に用いるポリキャップMが非常に変わった形状をしていて、肘関節の動きが非常に変わっているのも、F91シリーズの中ではこのキットだけです。

 

 

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赤と青の色分けがくっきり分かれた4連ミサイルポッド。流石にミサイルの弾頭は一体化されていますが、ミサイル4つというのも初代ガンタンクRX-75へのオマージュですね。どっちも同じ大河原邦男デザインだからオマージュというか「セルフリメイク」なんだろうか?

 

 

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足首(ってよく言うけど別に足首じゃないよなここな)部分はシリンダーとアーマーがひとつのパーツになってるんですが、四角い「ベロ」が伸びているのにご注目。

 

 

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これが何かというと正面から見たときに足首関節のポリキャップを隠すカバーになっているんですね。ほんのささやかな工夫ですが効果は高く、声を出して驚きました。いやぁ、いい設計ですよこのプラモデル。

 

 

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脚の後ろ側、人間で言うとふくらはぎの部分は履帯(脚部キャタピラ)になっています。この箇所ではベルト式の履帯を回していくのですが、グレー成形のNo.46パーツに四角く開いたくぼみに履帯の凸部を組み合わせる、

 

 

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この箇所ですね、ここでしっかり押さえることで、ポリ材質の履帯が綺麗に巻き付く形になります。結構ベルト履帯のテンションが高いので、これもちょっとした工夫で安心して組み立てられる巧みな設計なのでしょう。

 

 

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脚部全体の構造はこんな感じです。膝関節はそれほど大きくは動きませんが、むしろ履帯やサーチライト部分は脛のパーツを接着した後からはめ込みできる、塗装する際に非常に便利なつくりです。うーむ、驚かされる事ばかりだ……

 

 

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胴体の中央部には大きなポリキャップHが配置されます。この部分は頭部が変形する際の基部となるので、大きなポリキャップで太い軸をしっかり受け止めるようになっています。実に行き届いた配慮であのこれホントに定価数百円のプラモデルなんですか?

 

 

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胴体部分はフロントスカートが可動します。これはF91シリーズに共通する仕様ですが、ガンタンクR44は一番小さなサイズでそれを実現させててやっぱりすごいぞ。胴体中央部分にある2つの赤いパーツは上下それぞれコマンダーとドライバー用の乗降ハッチで、本編ではここが閉まらず開けっ放しで戦闘してましたよおっかない話ですよ。左右にあるガンナー用のハッチは、かろうじて側面にパネルラインが見えますが正面は消えているので、ここは掘り直してもいいかな?でもこの小さなボディに乗員4名って無茶な設定で、装甲の薄いまるで「動く棺桶」みたいなモビルスーツであります……本編でも当初のクルーはほとんど死んじゃったしな。

 

 

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頭部の組み立ては左右のパーツ内側に円形のポリキャプCを配置してT字状のジョイントで繋ぐ構成です。これもガンプラではあまり見ない処置。というかね初めて見たんですけどねこういうのは。

 

 

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その頭部なんですが、軽率にもクリアーパーツを曇らせてしまいました_(:3 」∠)_

 

 

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際立った特徴はないんですがスマートにヒロイックな顔つきをしています。デザイナーこそ違うけど「メガゾーン23」のガーランドによく似ているのは、まあこういうスタイルが流行りだったって事なんだろうか?80年代風「リアルロボ」顔というかなんというか……

 

 

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背部キャタピラの組み立ては脚部とほぼ同様、なんですが。

 

 

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ここで注目すべきは履帯を巻き付けると勝手にパーツの合わせ目を隠してくれることでしょう!おいおい、これマジですごいぞ……

 

 

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二基のユニットを中央部分に接続します。それぞれのユニットは一本の軸で繋がれているのでシンクロして動きます。別にわざわざそんなことしなくても良いのでしょうが、動かすと面白いんですよこれが。

 

 

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動かして遊んでいるうちに偶然発見された謎形態。爆発物処理ロボットみたい(笑)

 

 

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主力兵装となる長距離ランチャーですが、構造には特に問題はありませんが「長距離ランチャー」というネーミングは大問題だと思います。ビームではなく徹甲弾を撃つなら普通に「大砲」じゃないのか。しかも口径200mmというのはその、同じ1/100スケールでMGのRX-75ガンタンクがあるから比べてみるといいんですが

 

RX-75ガンタンクの主砲は口径120mmという公式設定があります。

 

ガンタンクR44の主砲は口径200mmという、これも公式設定です。

 

RX-75ガンタンクの主砲はガンタンクR44の主砲と比べて倍以上に巨大です。

 

な に か が お か し い 。

 

 

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細かいことは気にしない!格好良ければそれでいい!!そういう精神で完成させる。どんくさい下半身キャタピラロボからスマートな人型ロボへと華麗に転進したガンタンクR44の勇姿をご覧ください。小さなフォルムに大きな武器を配置して強そうに見せる。そういう発想でデザインされているのがとてもよくわかります。

 

 

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背面にはキャタピラユニットが集中してこのモビルスーツがただの人型では済まないことを示しています。状況に合わせて自在に変形、対応する兵器として、これなら映画の中で大活躍するように思うでしょ?

 

 

 

 

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でもそんなことは全然ないのだ(´・ω・`)

 

なにしろこのフル装備状態でスクリーン出ることは一瞬たりとも無かったからな(´・ω・`)

 

 

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映画の中での扱いはともかく、これまで見てきたようにとてもよく出来たプラモデルです。特に驚かされたのは、先にも書いたように肘関節の可動範囲。まずこのように前後に180度近く動き、

 

 

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さらにそれとは別に内側に曲げることができる。これがつまりどういうことかというと……

 

 

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肘を内側に曲げたまま下腕を前に出して、大河原邦男の設定画によく見られるいわゆる「ガワラ曲げ」が可能な構造になっています。これが出来るガンプラもそう多くは無いので、実に驚かされました。リーズナブルな価格でこのギミック搭載してる製品って、他に何かあっただろうか?

 

 

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人間には有り得ない動きなのですが、産業用ロボットのアーム可動を見ているようで面白いものです。人型兵器が必ずしも人体の構造をトレースしなければならない訳でもないでしょうし。それでこの独特な構造がガンタンクR44特有の変形機構のためかと思いきや、そうでもないんですな。尚且つ、F91シリーズの他のキットにもこの肘構造を組み込めそうなのにそれはやってないので、その辺が「ガンタンクR44だけは設計者が違うのではないか?」と思う理由です。

 

F91シリーズはどれも概ね良い出来なのですが、バンダイの古いシリーズでたまにある「脇役メカの方がよく出来てる」パターンにも似てて、「主役メカはベテランが担当して保守的な作りになるが、脇役は若手に任せられて自由な設計がされる」ような感じです。いやホントのところはわかりませんけどね(^^;

 

 

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脚部は前後に180度開脚します。ただ左右方向への可動や接地性はあまり高くはありません。これは元デザインの形状によることが大きいのだけれど、脚があまり動かない分、腕に設計の自由を求めたのかも知れません。

 

 

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戦車モードへの変形はハンドパーツを差し替えるだけであとは頭を下げ脚を伸ばし、背部キャタピラを下げるだけで簡単に移行します。少ないアクションでも大幅にシルエットが変わるのは流石の大河原邦男デザイン。ガンタンクR44のデザイン自体は、SF映画「ガンヘッド」で初期案として考案されたメカを元に、それをガンダム風にリライトされるかたちで起こされています。その後まったく別の作品である「機動戦士ガンダムSEED」にほぼ同じスタイルで変形するモビルスーツ「ザウート」が出てきたり、「機動戦士ガンダムUC」ではガンタンクR44に直接関連する機体として「ロト」が出てきたり、マイナーなようでいろいろ出番はありますな。しかしどこに出ても常にマイナーな役どころなのは、報われない一族ではある……

 

 

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ガンダムF91本編でも出番のほとんどは戦車モードで「出来損ないのモビルスーツ」みたいな扱いでした。スペースコロニ―「フロンティアIV」内で私設戦争博物館を運営するロイ・ユング館長が個人的に所持していたレプリカ(台詞でレプリカと言われていたけどレストアの間違いだという気がしなくもない)で、一発撃ったら主砲は破裂するわすぐ撃破されて博物館職員からなるクルーは全滅するわでまあ散々である。でもその後大破したガンタンクR44に乗って子供たちが避難する流れは良かったなあ。

 

 

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そしてこのキットには、主砲の砲弾が3つとミサイルが2発、さらにミサイル用のキャリアーが付属します。これは実際嬉しいオマケで、映画の中でも数少ないガンタンクR44の登場場面には、弾薬を補充する整備シーンがありました。同スケールのフィギュアを配置すれば、映画の場面を簡単にジオラマで作れる。そういう楽しさがあります。プレイバリューが高いと言えばよいか。

 

それになにより、いまでこそバンダイはガンプラに使える1/100スケールのフィギュアを製品化していますが、このキットが発売された1990年代にはそんなものは無かったんですね。だからもし、このプラモデルを組み立てたユーザーがオマケのパーツも活用してジオラマ作ろうと思ったら、模型店に行ってガンプラ以外の製品を探さなければならなかった。ユーザーの視点を広げて他の分野にも興味や関心を持たせようとする、そういう思想がたぶんこの小さなガンプラにはたっぷり詰まっています。実によく出来た製品です。

 

 

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1/100スケールのファーストガンダム(MG Ver. 3.0)が出て来たので、ちょっと並べてみましたよ。いまではガンプラはむしろ「箱の中にあるものだけで」完全に組み立てられるんだけど、1990年代の製品を見直すとやはり今とは違っていろいろ考えさせられます。

 

 

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武装を外すと普通に主人公メカっぽいので(いや実際主人公のシーブックくんも動かしてたMSなんですが)、ここからライフルなりシールドなりを持たせても面白いかも知れません。ザウートやロトを作るのは、ちょっと難しいかなー。

 

 

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本編でガンタンクR44は1シーンだけMS形態になります。その時すでに2門の主砲と右腕、そして頭部は失われているんですが、もしかするとこれファーストガンダムの「ラストシューティング」のオマージュだったんじゃなかろうか?F91は5月に新しいマスターグレードがでますから、いま映画を見直したら新しい発見があるかも知れませんね。

 

 

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この先ガンタンクR44の新しいキットが出るなんてこともまずないのでしょうが、この旧キットは既にパーフェクト・グレードであった。それぐらいに感動する内容でしたよ気づくのが遅すぎましたよ!!!!