ドラゴン「1/72 ドイツ超重戦車マウス」キットレビュー

ドラゴン「1/72 ドイツ超重戦車マウス」キットレビュー

2018/02/26

  • 作例・レビュー

001

 

ドラゴン「1/72 ドイツ超重戦車 マウス」

 

ドラゴンモデルズ1/72スケールミリタリーモデルシリーズのマウスです。そこそこベテランの製品ですが(著作権表記見たら2005年発売のようです)、最近ガールズ&パンツァー版蝶野正洋スペシャル版としてもリリースされました。デカール以外は同一内容ですので、それらの参考にもしてみてください。

 

マウスはドイツ軍が第二次世界大戦当時に開発した重戦車です。全長約10m、重量約188tと実際に製造された戦車の中でも最大級のサイズを誇り、「史上最大の超重戦車」などと評されることも多い車両。わずか2両が試作されたに過ぎない存在ですが、昔から有名な戦車ではあります。残された資料は少なく実態については謎に包まれた事も多いのですが、今でも研究は続き「新事実」が発覚したりもしますね。なんでこんなデカい戦車に「ネズミ」なんてカワイイ名前がついてるかといえば、超重戦車開発計画を秘匿するためだそうで。そんなんで秘匿になるのかという疑問はこの際置いといて。

 

 

 

002

 

いちおう車体の上下パーツにはA1、A2パーツのナンバリングがされています。1/72スケールの戦車模型は「ミニスケール」などとも呼ばれますが、さすがにこいつはそこそこデカい(笑)。なので一般的な1/72スケールの戦車模型よりは作りやすいキットです。

ドラゴンモデルは1990年代に世界初のマウスのプラモデルを1/35スケールでリリースして世の中を驚かせたものですが、それはやや出来の良くないところも散見されました。こちらの1/72モデルは、後発な分形状が洗練されている箇所もあります。同時期にペガサスモデルからも1/72マウスが出てましたが、さすがに最近は見かけなくなりました。あれはトランペッターのOEMだったのかな?

 

 

003

 

Bランナーは砲塔、試作第2号車いわゆる「マウスV2」の砲塔パーツを構成します。砲塔自体はランナーとは別に枠外にあって、たぶんここだけ型が別なんでしょうね。

 

 

004

 

Cランナーは試作第1号車「マウスV1」用ダミー砲塔のパーツです。このキット随分前から見てはいたけれど、ちゃんと中身を確認したことがなくて、1号車/2号車の選択式になってたとは今回初めて知りました(笑)。完成品のドラゴンアーマーシリーズには確かに1号車もありましたもんね、考えてみればね。

 

 

005

 

Dランナーは転輪関連で2枚入ってます。マウスというのは外観はシンプルでも足回りは複雑な戦車で、主な部品はだいたいこの辺に集中してます。

 

 

006

 

Eランナーは車体側面パーツなど。ドイツ(に限らず)戦車によくあるスコップなどの車外装備品がまったく無いので、パーツ総数そんなに多くはありません。あと形状自体も結構単純なカタチをしてますな。

 

 

007

 

履帯はベルト式、デカールとエッチングパーツが一枚ずつ入って、まあ平均的な構成と言えましょうか。

 

 

008

 

巨大な砲塔は底面と後面以外は一体成型、溶接線や装甲板の切削痕もモールドされています。

 

 

009

 

 

車体上部のグリルも綺麗に抜けていて、10年以上前のキットでも金型のメンテナンスなどは丁寧に行われているようですね。それぞれの桁は随分太いのですが、なにしろ実車もそんな感じなんでこれで正解なのです。

 

 

010

 

砲身は主砲・副砲(同軸副砲なんてものが存在する戦車も珍しいのですが)ともスライド金型を使用して、1ピース構成・砲口開口済みです。手前に写ってる砲身は2ピースになってますが、こちらは不用パーツです(同じランナーを使用するE-100重戦車用の砲身パーツです)。

 

 

011

 

デカールはドイツ軍の国籍マークや数字の他、ソ連軍に捕獲された状態を再現するものや、架空のキルマークが付属します。第二次大戦末期、ベルリン防衛に配置されたマウスは一両の敵戦車も撃破することなく自爆処分されて終わったのですが、このあたりは自由な発想でお使いください。そういやプレイステーションの戦車戦ゲーム「パンツァーフロント」のベルリンステージでマウス使えたなあ、急に思い出した。

 

あ、ところでキット解説には「フィギュア2体入り」とありますが(日本輸入代理店プラッツにページにも製造元のドラゴン(ドラゴンUSA)のサイトにもその旨記されておりますが)、そんなものは影も形もない無いのでご注意。初回限定付属とかそういう類かしらん。

 

 

012

 

製作は足回りから始めます。マウスのサスペンションはドイツ軍戦車の中でも極めて特殊なもので4つの転輪で構成されるのボギーが左右で合計12個、総計48個の転輪でこの巨体を支えます。ちょっと気が遠くなったけど実際に手を動かせば思いのほかスムーズに組めました。

 

 

013

 

というのもこのサスペンンション部分、接着剤使わずにはめ込むだけでパチパチ組み上がるのですよ。ドラゴンのキットは全般的に組み難いイメージがあったんで、ちょっとこれは驚き。なおこの画像ではパーティングラインの処置がいいかげんですが、どうせ完成したら全然見えなくなるので特にこだわらなくてもエブリシングA-オーケイという感じだ(笑)

 

 

014

 

車体幅の2/3は転輪が占めるマウス戦車の底面図。中央の1/3幅部分にエンジンと電気モーターが配置される、今でいうところのハイブリッド戦車なわけです。これだけみっしり転輪がならんでるのは、厚い装甲と強力な兵装がとんでもない重量をもつからで、サスペンションへの負荷も高いだろうと思われます。ちなみに1/72マウスのこの辺のパーツ構成は1/35よりも洗練されていて、各サスペンションは取り付けやすくなってますね。

 

 

015

 

車体前部のグリルには防弾板が装備されています。この部分だけでも80mmの厚さがあって、これは当時の主力戦車IV号戦車H型の最大装甲厚と同じという凄まじさ。マウスの本体の最大装甲厚は240mmでまあいろいろケタ違いな戦車であります。日本軍が本土決戦用に温存してた三式中戦車は50mmしかないのでなんてこった。いや、比べるようなものでも無いですけれど……

 

 

016

 

後部のグリルにはパーツ裏側にエッチングメッシュ(メッシュというより丸穴の空いたパンチングプレート状のもの)を貼ります。

 

 

017

 

表から見るとこの通り。グリル部分にも厚みを感じるよい配置……なのですが、

 

 

018

 

前部グリルにはエッチングパーツが用意されてません。完成するとこっちの方が目立つのになぜ!?なのでまあ、こちらにもなにか用意した方がいいでしょう。前述したように後部グリルのエッチングパーツがちょっと変わった形状なので、前後ともまとめてメッシュパーツを用意した方が統一感あっていいかな?ちなみに実車はメッシュでもパンチングプレートでもなくもっと複雑なグレーチング(格子)状の構成なので、それをそのまま再現するのはモノスゴク大変です。なのでまあ、どこかで妥協した方が楽だと思います……よ?

 

 

019

 

128mm主砲と75mm副砲を有する砲塔(V2砲塔)はパーツ数も少なくあっというまに組み上がります。なのであんまり解説することはない……のですけれど、いささか疑問点があります。

 

 

019-a

 

砲塔上面の円形に凹んだ部分、実はペリスコープのパーツ(B19)が用意されてます。実車では撤去されてフタが溶接されたのでペリスコープ自体は取り付けなくても構わないのですが、その場合段差は生じないので高さを揃えたほうが無難です。ガールズ&パンツァ―仕様の場合はペリスコープが存在しましたので、不要パーツとされているB19を使用してください(ガルパン版のキットが手元に無いので説明書がどうなっているのかちょっとわかりません。使用の指示が出てるかな?)。

 

あー、いま気がついたんですが砲塔側面に◎状のモールドがあるのはヘンですな。ここも丸いフタが溶接されてるはずで、キットのこの形状はE-100戦車を作る際に機銃マウントを取り付けるためのものか。側面は流石に目立ちますねえううむ。

 

 

020

 

こちらはマウスV1の試験用ダミー砲塔。たしかコンクリート製だと聞いたんですが、ものによっては鋳造製と解説されてる場合もあるようです。本当はどっちなんだろ?何にせよ実際の重量バランスを再現するために前方が厚く(=重く)なるように作られていて、キットでは2枚の板状パーツを使うことで厚みを再現しています。

 

 

021

 

V1砲塔には吊り下げ用に四個の突起が存在しますが、キットでは長短2種類の形状から選択します。開口部周囲の手すりは、時期によっては装着されてないようでどうも後から追加されたんでしょうね。前面のボンベは何に使うためのものなんだろう?

 

 

022

 

実車ではV1砲塔の内側には試験用と思しきメーターパネルが設置されていたのですが、そのパーツは含まれていません。

 

 

023

 

履帯は差し込んで両端を接着するだけ!ちょうかんたん!!ベルト式履帯サイコーです!!!(個人の政治・宗教的信条です)

 

 

024

 

エンジン排気管はV1とV2で形状が違いますのでどちらか選択してください。今回はV1のものを使用しました。

 

 

025

 

車体上下や側面、後部の燃料タンクを取り付けて砲塔乗せたら完成です!あまり細かいディティールの無い戦車なのですが、鉄の塊が押し寄せてくるような印象ではあり。

 

 

026

 

わずか2両のみが製造されたマウス、戦後ソ連に運ばれそのまま失われたと長年思われていました。しかし旧ソ連の末期にそれまで軍事機密だったクビンカ戦車博物館が一般公開されたときに、このマウスもコレクションのひとつとして残されていて、大きな驚きを持って迎えられました。現存するマウスはV1の車体とV2の砲塔が組み合わされた状態です。ほとんどのパーツは失われ内部のエンジンやモーターも撤去され、まるで恐竜の化石のような状態ではありますが、ともかくこの「史上最大の超重戦車」は、今も確かに存在するのです。

 

 

027

 

第二次世界大戦の最末期に投入されたために「最後の戦車」みたいなイメージもありますが、計画自体は1941年末に始まっています。ドイツ軍のモスクワ攻略が失敗した頃に「いずれソ連軍は超重戦車を作って反撃してくるだろう」との憶測で、それに備えるかたちで開発されたそうなんですが、実際にはそんなもの出現しなかったので「泰山鳴動して鼠一匹」というアレ……なのかな。いや2両作られたんですけどね。砲塔の形状やドラム缶方式の外部燃料タンクは、ソ連軍のT-34戦車によく似てます。ドイツ軍が(というよりヒトラーが)危惧したように、もしもソ連軍が本当に超重戦車を作ったら、案外マウスみたいな形になってたかもしれませんねえ。

 

 

028

 

こちらはV1仕様です。ダミー砲塔の上部が開いているので眺めは良い。これでパレードしたらさぞや楽しかろうですが、最高時速20kmではあんま面白くもないかもだ。側面の装甲が90度の直角に切り立っているのは、敵兵がよじ登ってくるのを防ぐためだとか随分前に何かで読んだ気がしますが、ホントなのかしら?

 

 

029

 

これだけ大きいと運用するのも一苦労で、実用性の無さからマウス計画は1944年初頭には中止されてしまいます。超巨大戦車というのも世界各国で夢想されるものではありますが、ホントに作っちゃったのはまあドイツ人ぐらいのものかな?(日本軍にもオイ車というのがまあ、あるにはありましたけれどこれは完成しませんでした)

 

ドイツ人がよく解らないのはほぼ同時期にほぼ同じようなスペックの、そしてほぼ同じように実用性皆無のE-100超重戦車というのを作ってたことで、よく言われるドイツの国民性は合理的で云々という認識はたぶん間違ってんじゃないかなーといや、戦車で国民性を語りだすのはそもそも間違いでしょうけど(^^;

 

 

030

 

あらゆるところが特徴だらけなマウスなんですが、最大の特徴はこの側面装甲ではありますまいか。一般的に戦車の車体側面装甲板というのは転輪の整備などのために分割されたり、いろいろ取り外しやすい構造になっています。だから「サイドスカート」などと呼ばれてますね。しかしこのマウスの側面装甲板は大型で分厚い鋼板を車体に頑丈に溶接しています。なので全然外れません。これはちょっと珍しいんですよ(前述E-100戦車は外せるようになってます。普通の設計です)

 

ただでさえクソ思い車体を複雑な構造のサスペンションで支えているのですが、

 

まあ壊れますわな普通。

 

どうやって整備するんだろう?

 

誰でも疑問に思います。

 

正解は「巨大な専用ジャッキを使って車体を持ち上げ、ついでに地面に穴を掘って整備する」でした。

 

記録写真が残ってますが、不合理にもほどがあると思います……

 

 

031

 

いい忘れてましたがエッチングパーツには梯子が含まれます。これもすごく重要なパーツです。が、綺麗に組めなかったんであんまり見ないでください(製品紹介ブログとは思えぬ記述だ)

 

まあこの梯子が何のためにあるかといえば

 

 

032

 

このように、側面に引っ掛けて使います(形状自体はちょっと実際のものとは異なるようです)。もちろん乗り降りに使うためのものなのですが、

 

これが無いと乗り降りできません。

 

試験場ならいざ知らず、実際の戦場では「梯子を運ぶ係」が存在したとはちょっと考えられないので、やはりこの戦車は何かがおかしい。

 

 

033

 

マウスV2も以前は「ベルリン防衛のために移動する途中で故障し、そこで爆破処分された」と伝えられてきましたが、どうも最近の研究ではベルリン近郊のドイツ国防軍最高司令部(OKH)秘匿施設「マイバッハ1」防衛の任に就き、移動は完了していたということです。最高司令部を守る巨大戦車なんてまるでロボットアニメの最終回に出て来そうな存在で、やはり超重戦車に夢やロマンはあるかも知れない……

 

 

034

 

手元にIBGの八九式中戦車があったので乗せてみましたよ。「ガールズ&パンツァー」TVシリーズ最終話の名場面をかなり雑に再現(雑過ぎにも程がある)

 

 

035

 

フィギュアを配置すると梯子が無いとどうにもならんとよくわかります。もし「実戦」を想定して模型を作るなら、その辺に配慮すると良いかも知れませんね。

 

 

036

 

マウスのプラモデルは1/35スケールではさすがに大きすぎて置き場所などに困るんですが、1/72でこのサイズ(だいたい12cmぐらいの大きさになるプラモデルです)というのは、まあお手頃です。現状品切れなんですが、蝶野正洋スペシャル版でしたら58%オフでセール中です。おひとついかがですか?

 

ところで、最近よくマウスを「VIII号戦車」とか「Sd.kfz.205」などと説明する記述を見るんですが、これ正しいのかな?昔はそんな呼び方しなかったし、205というのは製造を担当したポルシェ社内部での車両番号なので、それがそのままドイツ軍の特殊車両番号に転用されるとは、ちょっと考えにくいです。出典がよくわからないんですよねどうもね。