エアフィックス「クイックビルド チャレンジャー戦車」

エアフィックス「クイックビルド チャレンジャー戦車」

2017/05/08

  • 作例・レビュー

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エアフィックス「クイックビルド チャレンジャー戦車」

 

ブロック感覚で組み立てられる接着剤要らずのスケールモデル、エアフィックス「クイックビルド」シリーズから、唯一のAFVアイテムであるチャレンジャー戦車を組み立ててみました。なお製品名ならびにパッケージ表記はチャレンジャーとなっていますが、ごらんの通りにチャレンジャー2を製品化したものです(車体底面パーツには「Challenger2」の刻印有り)。

 

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クイックビルドシリーズのコンセプトに関してはどれほど言葉を費やすよりも、このビジュアルイメージで全部伝わるように思います。レゴやダイヤブロックのような感覚で作られた、とはいえやっぱりレゴやダイヤブロックのような「ブロック玩具」よりは「プラモデル」に寄せている製品。画面右側に実車のスペックが記されているのは、やはりこれが「実在する車両を縮小化したプラスチックモデルである」ことの存在証明みたいなものでしょうか?最近ではレゴ的なブロック玩具でもタイガーIやII号戦車を作れるような製品がありますが、あの辺の物ともまた違ってユニークなアイテムとなっています。

 

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パーツは転輪以外はあらかじめ切り出されてバルク化されています。この辺の感覚は実にブロックであー、近年ガンプラやコトブキヤのプラモデルは共通ジョイントを活用してユニットごとに組み替えられる「ブロック玩具的」な方向性を持っていますが、エアフィックスのクイックビルドはもっとプリミティブな意味で「ブロック玩具的」なのですな、言ってみれば。

 

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スナップフィットのプラモデルを設計生産することは、そうそう簡単なことではありません。日本で日本製のプラモデルだけを組んでいるとなかなか気が付かないのですが、スムーズに嵌合してパーツ同士が密着するスナップフィットモデルを作るには設計技術や製造経験の蓄積が必須で、海外メーカーの製品では稀に設計と実際が空回りしている(?)ようなものも見受けられます。プラモデルのパーツ一体化を進めて、そのハメ込みにはブロックとしての凹凸を組み合わせるというのは大変斬新な発想で、老舗プラモデルメーカーであったエアフィックスが、玩具メーカーであるホーンビー社の傘下に入ったことの影響ではあるのかも知れません。

 

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そのうえで、スケールモデルとしてのスタンスは失わない。プラモデルというのはそもそも玩具の一形態ではありますが、玩具的な要素を十分に備えて且つプラモデルへの入り口となるもの、入門者や年少者をターゲットにした製品として、非常に意欲を感じます。このサイドスカートのディティールなどは単に「ブロック」だけではない「プラモデル」としての要素、プラスチックの固まりに「リアリティ」を付加するものでしょう。

 

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パーツは全部で35点という非常に少ないもので、砲塔部分はわずか5パーツで構成されています。むろんディティールは省略されていますが、カートゥーンモデルのような「ディフォルメ」はなく、志向としてはオーセンティック・スケール・モデルを目指した内容。

 

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車体上面部分です。完成後目に見える箇所からはブロックの凸部が隠されるような構造になっています。

 

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車体下部。全35パーツのうち16個は実は転輪だったりするので、感覚的にはもっと少ないようにも受け止められます。

 

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シールとキャタピラ、マーキングに関してははっきりと明言はされていないのですが、2003年のイラク戦争「テリック作戦」参加車両。キャタピラは当初からリング状に成型されたゴムキャタピラです。かねがね折に触れて言ってるのですがみなさん、ベルトキャタピラは最高です。女子小学生がバスケットボールするような良さがあります。

 

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組み立てはなにか童心に帰るようなところがあって、脳細胞の奥底がグリグリ刺激されるかのよう。何も考えず、ただただ断片が形を成していく様子を楽しむこと。模型を作る楽しさというのは突き詰めればそこにあるのだなーと、再認識させてくれます。そしてこれはとても大切なことですが、まるでストレスを感じません。むしろ癒し系である。

 

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このあたりの工程ではまだまだブロック然とはしているのですけれど、タミヤの工作シリーズみたいなよさもあるのかしら。はめ込み式の転輪は自由に回転するので、ベルトキャタピラと合わせていくらでもブンドドできます。Oh, It’s Primitive !!

 

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そしてだんだん上面パーツがブロックらしさを覆い隠し、プラモデルらしさに近づいてくる…

 

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砲塔リングなんかは実に見慣れた形でなんだか安心しますねい。

 

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車体部分の完成です。パーツの分割ラインはたしかにキョーレツなものですが、たしかにチャレンジャー2には見える。キャタピラパターンひとつとっても実車とはまるで異なるものですが、それでもここには、この大きさの、チャレンジャー2が組み立てられている。不思議な感覚です。

 

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砲塔もシンプルなつくりのでさくさく組み立てて行きます。言い忘れてましたが特にパーツNo.は存在しません。存在しませんがそれで別に困りはしない。唯一間違えそうなのは大小2種ある転輪関係パーツですが、フルカラー印刷された取説は非常にわかりやすく、お子様にも大変組み立てやすいものであります。

 

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砲塔組み立て終わり。砲口が開いてないとかTOGSII暗視装置の扉がモールドされてないとか言うのは大人気ないことですハイ。

 

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組み上がるとサイズはおおむね1/48スケール程度、手に馴染む大きさです。エアフィックスは現用イギリス軍車両プラモデルを1/48で展開していて、ウォリアーIFVはあるのにチャレンジャーをキット化しないのは何故だろうと思っていたらまさかの本シリーズでの製品化。明らかに子供に向けて戦車を作ろうとアピールしているこのスタンスは貴重です。

 

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先に「童心に帰る」と書きましたが、このキットを組んでいて思い出すのはニチモの30cmシリーズやカバヤのビッグワンガムなどの「プラモデル」でした。どちらも年少者や入門者に向けた簡単なつくりのプラモデルで、世代よってはそういうところからプラモデル趣味を始めた方も多いでしょう。ラインナップを見るとエアフィックスの他のシリーズにそのまま直結しているようにも思えます。これは結構重要なことで、たとえばガンプラがブームだったころやミニ四駆が最初のブームを迎えた時期、これらの製品を年少者の「入口にして」、いずれは一般のプラモデル(『一般のプラモデル』というのは実におかしな言葉なんですが、話の流れ上こういう言い方をします)に広がるのではないか…という目論見、見通しのようなものが業界にはあったかもしれません。確かに、ガンプラやミニ四駆を起点に様々なジャンルに手を伸ばした人も多かったことでしょう。でも大多数の人はそのままガンプラを作り続け、ミニ四駆を作り続けました。そういうものです。

 

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スミ入れしたら見違えたのでびっくりしました。と同時にやはりこのシリーズが目指しているのは「入門用のスケールモデル」なのだろうと強く感じます。ここで取り込んだ層をそのまま「スケールモデルを作り続けるモデラー」に繋げようという思想、企業戦略でしょうか。タミヤのミリタリーミニチュアが90年代に再興したのは「出戻り組」のモデラー層によるものだと言われています。出戻り、つまり昔からタミヤのMMを作っていた世代が、もう一度MMを作り出したことが、その後の発展と拡大につながったわけです。

 

翻って、いまの日本のスケールモデルがどこまで年少者や入門者の、「その先まで見据えて」製品開発を行っているのかは、それはどうなんだろうなあ…

 

そんなことを思う「こどもの日」である(この作例は5/5に完成しました)

 

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CIP(戦闘識別パネル)をシールで済ませてしまう思い切りの良さには驚かされます。こういうプロダクツを「オモチャである」として切って捨てることは実際可能ではありますが、敢えて言えばプラモデルだってオモチャのひとつの形態に過ぎません。本製品は非常にシンプルなプラモデルでしたが、組んでいて色々複雑な気持ちになります。が、フツーはそんなこと考えなくてエエと思います(w

 

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もっと単純に、すごーい!とかたーのしーい!とか、きみはL30A1 55口径120mm ライフル砲とドーチェスターレベル2複合装甲を備えたフレンズなんだね!などとプリミティブに楽しむのがよいでしょう。趣味って本来そういうものです。

 

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キットの想定としては無塗装で楽しむところなのでしょうけれど(迷彩色でパーツ分割されたスピットファイアはプラモデルの常識を超えて衝撃的でした)、ウェザリングなどひと手間加えればその差は歴然。じゃあもうひとつふたつ手間を重ねたら…?という階梯をユーザーに提示して見せる。イギリスが産業革命を成功させたのは「囲い込み(ディスクロージャー)」によるものだというのは、この際全然関係ないのですが(ないのか)

 

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こういうアイテムは日本の模型メディアではなかなか取り上げてもらえません。まあ日本に限らずなのでしょうね、ABRAMS SQUAD あたりが取り上げたなんて話も聞きませんからねー。でも、例えメディアに載らないようなものであっても、むしろ乗らないようなものであるからこそ、注目すべき点をみつけてそれを報知したくなるもので。大変面白い題材でした。

 

そうだ最後にもうひとつ、このキットの大変すばらしい点は

 

パーツ落っことしてもすぐ見つかる!マジ大事ですからそれ!!